お寿司に合う日本酒の選び方!特定名称酒とは?味わいの特徴や分類を徹底解説

お寿司屋さんや和食店でメニューを開くと、「純米吟醸(じゅんまいぎんじょう)」や「特別本醸造(とくべつほんじょうぞう)」といった専門用語がずらりと並んでいて、どれを選べば良いか迷ってしまうことはありませんか?
日本酒には、原料や製法によって細かく分けられた「特定名称酒(とくていめいしょうしゅ)」という分類があります。これを知っているだけで、自分の好みに合ったお酒を選べるようになるだけでなく、料理とのペアリング(相性)をより深く楽しめるようになります。

この記事では、唎酒師(ききざけし)の資格を持つ寿司職人が、特定名称酒の基本となる定義や、8種類の違い、それぞれの味わいの特徴について分かりやすく解説します。専門的な用語も噛み砕いてお伝えしますので、日本酒初心者の方も安心してお読みください。

この記事のポイント

  • 特定名称酒とは?「普通酒」との違いや定義を解説
  • 「精米歩合(せいまいぶあい)」と「醸造アルコール」が味わいを決めるカギ
  • 純米大吟醸、吟醸、本醸造など全8種類の分類一覧
  • 華やかな香り?ふくよかな旨み?それぞれの味わいの特徴
  • お寿司のネタ(白身・赤身・煮穴子など)に合うおすすめの選び方

特定名称酒とは?日本酒の種類と分類の基本を解説

お寿司屋さんや和食店で日本酒のメニューを開いたとき、「純米酒」や「大吟醸」といった言葉を目にしたことはないでしょうか。これらの名称は、日本酒の分類である「特定名称酒(とくていめいしょうしゅ)」と呼ばれるものです。

日本酒は、使われている原料や造り方によって細かく分類されており、それぞれに明確な基準が設けられています。まずは、特定名称酒の基本となる定義や、分類を決める重要な用語について詳しく解説いたします。

特定名称酒の定義と「普通酒」との違い

特定名称酒とは、国税庁が定める「清酒の製法品質表示基準」という法律に基づき、一定の要件を満たした日本酒だけに表示が許される特別な名称のことです。
具体的には、使用する原料(米、米麹、水、醸造アルコール)、お米の削り具合(精米歩合)、そして特別な醸造方法などの基準をクリアしたものだけが、特定名称酒を名乗ることができます。

一方で、この特定名称酒の厳しい要件に当てはまらない日本酒は、一般的に「普通酒(ふつうしゅ)」と呼ばれます。普通酒は、価格が手頃で日常的に親しまれているお酒が多く、醸造アルコールや糖類などが比較的多く添加されているのが特徴です。つまり、特定名称酒は、より素材や製法にこだわって造られたワンランク上の日本酒と言えます。

分類を決める重要用語1「精米歩合(せいまいぶあい)」

特定名称酒を理解する上で欠かせないのが、「精米歩合」という言葉です。
精米歩合とは、日本酒の原料となる玄米を削り(精米し)、残った白い部分の割合をパーセンテージ(%)で表したものです。

お米の表層部分には、タンパク質や脂質などの成分が多く含まれています。これらは食べる分には旨みや栄養になりますが、お酒を造る際には「雑味(ざつみ)」の原因になりやすいという特徴があります。そのため、お米の表面を多く削り落とし、中心部分にある純粋なデンプン質だけを使うことで、すっきりとクリアで華やかな香りを持つ日本酒に仕上がります。
例えば、「精米歩合60%」と記載されている場合は、お米の表面を40%削り落とし、残った60%の中心部分だけを使用しているという意味になります。

分類を決める重要用語2「醸造アルコール」と「米麹(こめこうじ)」

特定名称酒の分類には、「醸造アルコール」が使われているかどうかも大きな基準となります。
醸造アルコールとは、サトウキビなどを発酵させて造られた純度の高いアルコールのことです。これを添加することで、日本酒の香りをより華やかに引き立てたり、味わいをすっきりとさせたりする効果があります。「アルコールを添加する」と聞くとマイナスなイメージを持たれる方もいらっしゃいますが、決してかさ増しのためではなく、味や香りのバランスを整えるための伝統的な高度な技術なのです。

また、日本酒の発酵に不可欠な「米麹」の使用割合も定められており、特定名称酒を名乗るためには、白米の重量に対して米麹を15%以上使用することが義務付けられています。

特定名称酒の8つの種類と分類一覧

特定名称酒は、先ほど解説した「醸造アルコールの有無」と「精米歩合」の違いによって、大きく8つの種類に分類されます。

分かりやすく理解するためには、まず「醸造アルコールを全く使っていない純米酒系」と、「醸造アルコールを添加している本醸造酒・吟醸酒系」の2つのグループに分けて覚えるのがおすすめです。それぞれの分類と特徴を一覧で確認してみましょう。

醸造アルコール無添加の「純米酒」系(4種類)

米、米麹、水だけを原料として造られるのが純米酒系です。お米本来のふくよかな旨みやコクをダイレクトに味わえるのが特徴です。

特定名称使用原料精米歩合の要件味わい・香りの特徴
純米大吟醸酒米・米麹50%以下吟醸造りによる極めて華やかな香りと、雑味のない洗練されたクリアな味わい。
純米吟醸酒米・米麹60%以下フルーティーな香りと、お米の優しい甘み・旨みのバランスが非常に良い。
特別純米酒米・米麹60%以下、または特別な製法純米酒よりも米を多く磨いており、すっきりとした飲み口の中に深いコクがある。
純米酒米・米麹規定なしお米の豊かな風味としっかりとした旨みが感じられ、どんな料理にも合わせやすい。

醸造アルコールを添加する「本醸造酒・吟醸酒」系(4種類)

米、米麹、水に加えて、規定量(白米重量の10%以下)の醸造アルコールを添加して造られるグループです。香りが引き立ち、すっきりと軽快な飲み口になるのが特徴です。

特定名称使用原料精米歩合の要件味わい・香りの特徴
大吟醸酒米・米麹・醸造アルコール50%以下最も華やかでフルーティーな香りを持ち、キレのある極めてすっきりとした味わい。
吟醸酒米・米麹・醸造アルコール60%以下華やかな吟醸香があり、滑らかでのどごしが良く、軽快に飲めるお酒。
特別本醸造酒米・米麹・醸造アルコール60%以下、または特別な製法本醸造酒よりもすっきりと洗練されており、食事の味を引き立てるクリアなキレがある。
本醸造酒米・米麹・醸造アルコール70%以下香りは控えめで、シンプルかつ辛口のすっきりとしたキレがあり、飲み飽きしない。

このように、日本酒は原料と精米歩合の組み合わせによって明確に8つに分類されています。メニュー選びの際は、この表を参考にしていただければ、ご自身の飲みたいお酒のイメージがグッと掴みやすくなるはずです。

特定名称酒それぞれの味わいの特徴

特定名称酒の8種類の分類が分かったところで、次はお酒を飲んだときの味わいや香りについて詳しく見ていきましょう。

特定名称酒は、精米歩合やアルコール添加の有無だけでなく、酵母の種類や発酵温度などの醸造工程によっても、大きく3つのタイプに分けることができます。ここでは、「吟醸酒・大吟醸酒」「純米酒・特別純米酒」「本醸造酒・特別本醸造酒」という3つのグループごとに、それぞれの味わいの特徴を解説します。

華やかな香りが魅力の「吟醸酒・大吟醸酒」

吟醸酒(ぎんじょうしゅ)と大吟醸酒(だいぎんじょうしゅ)の最大の特徴は、「吟醸香(ぎんじょうか)」と呼ばれる、まるでリンゴやメロン、バナナのようなフルーティーで華やかな香りです。

この独特の香りは、「吟醸造り(ぎんじょうづくり)」という特別な製法によって生み出されます。吟醸造りでは、よく磨いた(精米歩合を低くした)お米を使い、通常よりも低い温度(およそ10度前後)で、約30日間という長い時間をかけてじっくりと発酵させます。低温でゆっくりと酵母を育てることで、華やかな香りの成分がお酒の中にたっぷりと閉じ込められるのです。

味わいは、雑味がなく非常にクリアで繊細。すっきりとした「淡麗辛口(たんれいからくち)」のものが多く、冷やして(10度前後)飲むことで、そのフレッシュな香りと滑らかなのどごしを最も堪能することができます。日本酒を飲み慣れていない方や、ワイングラスでお酒を楽しみたい方にもおすすめの特定名称酒です。

米本来のふくよかな旨みを楽しむ「純米酒・特別純米酒」

純米酒(じゅんまいしゅ)と特別純米酒は、お米と米麹、水だけで造られるため、お米本来のふくよかな旨みや深いコクをダイレクトに感じられるのが特徴です。

吟醸酒のような際立った華やかな香りは控えめですが、その分、口に含んだときに広がるお米の優しい甘みと、しっかりとした酸味が絶妙なバランスを保っています。このような、味わいに厚みがあり旨みが強いタイプを「濃醇旨口(のうじゅんうまくち)」と呼びます。

また、純米酒は飲む温度帯によって様々な表情を見せてくれるのも魅力の一つです。冷やしてすっきりと飲むのはもちろん、常温や、温めて「燗酒(かんざけ)」にすることで、お米のふくらみのある香りと旨みがより一層引き立ち、まろやかな口当たりを楽しむことができます。

すっきりとキレのある「本醸造酒・特別本醸造酒」

本醸造酒(ほんじょうぞうしゅ)と特別本醸造酒は、規定量(白米重量の10%以下)の醸造アルコールを添加することで、純米酒よりも香りがすっきりと控えめになり、軽快でドライな飲み口に仕上がっているのが特徴です。

味わいは非常にシンプルで、後味の「キレ」の良さが際立っています。口の中に残る甘みや旨みがスッと消えるため、どんな料理と合わせても邪魔をせず、次の一口、また次の一口と飲み進めたくなる、いわゆる「飲み飽きしない」お酒です。

冷酒から熱燗まで幅広い温度帯で楽しむことができ、日常の食卓を彩る食中酒(しょくちゅうしゅ)として、非常に優秀な特定名称酒と言えます。

お寿司や和食に合う特定名称酒のおすすめの選び方

特定名称酒それぞれの味わいの違いが分かれば、お料理との相性(ペアリング)を考えるのが格段に楽しくなります。
美味しいお寿司や和食をいただく際、どのお酒を選べば良いか迷ったときは、お料理の「味の濃さ」とお酒の「香りとコク」を合わせるのが基本の考え方です。ここでは、お寿司のネタに合わせた特定名称酒のおすすめの選び方をご紹介します。

白身魚や繊細な寿司ネタには「純米大吟醸」や「吟醸酒」

ヒラメや鯛(タイ)、イカといった淡白で繊細な旨みを持つ白身魚のお寿司には、同じく繊細でクリアな味わいを持つ「純米大吟醸酒」や「吟醸酒」がよく合います。

吟醸酒の持つフルーティーで華やかな吟醸香と、すっきりとした淡麗な飲み口は、白身魚の上品な甘みをふわりと引き立ててくれます。また、レモンやスダチを絞って塩でいただくような、さっぱりとした味付けの魚介料理やお刺身とも相性抜群です。
ただし、お酒の香りが強すぎると、繊細な魚の風味を覆い隠してしまうこともあるため、食事の前半や、さっぱりとした前菜と一緒に楽しむのがおすすめです。

マグロや煮穴子など濃厚な味わいには「純米酒」

脂の乗ったマグロの中トロやブリ、甘いツメを塗ったふっくらとした煮穴子、あるいはウニといった濃厚でコクのあるお寿司には、お米のしっかりとした旨みを持つ「純米酒」や「特別純米酒」がベストマッチします。

お魚の豊かな脂の甘みと、純米酒の持つふくよかなお米の旨みが見事に調和(マリアージュ)し、口の中で何倍にも美味しさが膨らみます。また、純米酒の持つ程よい酸味が、魚の脂をすっきりと洗い流してくれるため、次のお寿司も美味しくいただくことができます。
お醤油をしっかりとつけていただくお刺身や、照り焼き、煮付けなどのしっかりとした味付けの和食全般にも、純米酒の濃醇な味わいは非常に良く合います。

迷ったときは、すっきりとキレが良く、どんなネタにも万能に寄り添ってくれる「本醸造酒」を選ぶのも、通(つう)な頼み方の一つです。

特定名称酒についてのまとめ

本記事では、「特定名称酒」の定義と8種類の分類、それぞれの味わいの特徴や、美味しいお寿司に合うおすすめの選び方について解説いたしました。

特定名称酒とは、原料や精米歩合、製造方法などの厳しい基準を満たした、ワンランク上の特別な日本酒のことです。
大きく分けると、醸造アルコールを使わずにお米の旨みをダイレクトに味わえる「純米酒」系と、アルコール添加によってすっきりとキレのある飲み口に仕上げた「本醸造・吟醸酒」系という2つのグループがあり、さらに精米歩合の違いによって全8種類に分類されています。

「吟醸酒」の華やかな香りや、「純米酒」のふくよかなコク、「本醸造酒」のキレの良さなど、それぞれに個性があり、どれが一番美味しいかという正解はありません。その日の気分や、一緒にいただくお料理(お寿司のネタなど)に合わせて、自由に飲み比べてみるのが一番の楽しみ方です。

今回ご紹介した知識を参考に、ぜひメニューの中から気になる特定名称酒を選んでみてください。きっと、これまで以上に日本酒の奥深さと、お食事との絶妙なハーモニーを感じていただけるはずです。美味しいお寿司とともに、あなただけのお気に入りの一杯に出会えることを願っております。