寿司屋の「むらさき」はなぜ?醤油を指す隠語の由来と歴史を徹底解説

お寿司屋さんで「お醤油」のことを「むらさき」と呼ぶのを聞いたことはありませんか?
「なぜ醤油を紫色と呼ぶの?」「他に変わった呼び方はあるの?」
そんな疑問を持ったことはないでしょうか。

実はこの「むらさき」という言葉、江戸時代から続く寿司文化と深く関係があり、言葉の由来を知ると、お寿司がもっと美味しく感じられるかもしれません。

この記事では、「むらさき」の語源や歴史的背景から、現代における使われ方、さらには寿司屋で使われる様々な符牒まで、詳しく解説していきます。
読み終わる頃には、あなたも寿司屋で「通」ぶれること間違いなし!?

この記事POINT!

  • 醤油を「むらさき」と呼ぶのは江戸時代から
  • 高価な醤油への敬意を込めた隠語・符牒
  • 昔の醤油は赤褐色で紫色に近かった
  • 日常生活や文学作品でも使われることがある
  • 寿司屋の符牒を知って食通ぶってみよう!

1. なぜ寿司屋で醤油を「むらさき」と呼ぶのか?

寿司屋で醤油を指す言葉として使われる「むらさき」。
この言葉の由来や背景には、言葉の意味や、寿司屋独特の文化、そして日本の歴史が深く関わっています。
ここでは、「むらさき」という言葉の謎を紐解いていきましょう。

1-1. 「むらさき」とは? – 言葉の意味と定義

「むらさき」は、もともとムラサキ(紫草)という植物の根からとれる染料で染められた、日本の伝統色である紫色を指す言葉です。
この紫色は、古くから高貴な色とされ、身分の高い人だけが身につけることを許されていました。
現代では、この色の名前が転じて、寿司屋を中心に醤油を指す隠語、符牒として使われています。

1-2. 寿司屋で「むらさき」が使われるようになった背景 – 符牒としての役割と語源

寿司屋で「むらさき」という言葉が使われるようになった背景には、いくつかの説があります。

  • 符牒としての役割: 寿司屋では、お客様に直接的な表現を避けるために、符牒(仲間内だけで通じる言葉)を使うことがあります。
    「むらさき」もその一つで、「醤油」という直接的な表現を避けるために使われ始めました。
    お客様に不快感を与えない、上品な言葉遣いを好む文化があったと考えられます。
  • 高価な醤油への敬意: 江戸時代、醤油は貴重で高価なものでした。
    庶民には手の届きにくい高級品だったため、「むらさき」という高貴な色を連想させる言葉で表現することで、醤油への敬意を表したという説があります。
  • 紫色の持つ神秘性: 紫色は、古来より神秘的で特別な色とされてきました。
    「むらさき」と呼ぶことで、醤油に特別な価値を与え、料理全体の格を上げる効果を狙ったとも考えられます。

1-3.「むらさき」の色合い- 当時の醤油の色との関係性

昔の醤油は、現代の濃口醤油と異なり、製法や材料、熟成期間の違いから、赤褐色を帯びた色をしていました。
特に、江戸時代に主流だった「古式醤油」と呼ばれるものは、現代の醤油よりも赤みが強く、光の加減によっては紫色に見えたとも言われています。
この「赤みがかった褐色」が、高貴な色である「紫」を連想させ、「むらさき」という呼び名につながったという説が有力です。

また、江戸時代には、紫根(ムラサキの根)で染めた「江戸紫」と呼ばれる、赤みがかった紫色が流行しました。
この流行色も、「むらさき」という言葉が醤油を指すようになった一因と考えられています。

2. 「むらさき」はいつから?醤油の歴史と江戸前寿司

醤油を「むらさき」と呼ぶようになったのは、いつ頃からなのでしょうか?
その答えを探るには、醤油の歴史と、江戸前寿司の誕生を紐解く必要があります。

2-1. 江戸時代以前の醤油 – 普及と高級品としての位置づけ

醤油の原型は、古代中国から伝わった「醤(ひしお)」と呼ばれる調味料に遡ります。
醤は、穀物や魚介類、肉などを塩漬けにして発酵させたもので、日本でも弥生時代には既に存在していたと言われています。

室町時代になると、大豆を使った現在の醤油に近いものが作られるようになり、寺院を中心に製造技術が発展しました。
戦国時代には、武将たちが保存食や調味料として醤油を重宝し、需要が高まります。
江戸時代に入ると、醸造技術がさらに向上し、大量生産が可能になったことで、醤油は徐々に庶民の食卓にも浸透していきます。
しかし、初期においては、まだまだ貴重な調味料であり、高級品として扱われていました。

2-2. 江戸前寿司の誕生と「むらさき」- 江戸っ子気質との関係

江戸前寿司は、江戸時代後期、1800年代初頭に江戸(現在の東京)で誕生しました。
屋台で、新鮮な魚介類を使い、酢飯と組み合わせた握り寿司は、手軽に食べられるファストフードとして、せっかちな江戸っ子たちの間で大人気となります。

この江戸前寿司の普及とともに、「むらさき」という言葉も広まったと考えられます。
冷蔵技術が未発達だった当時、新鮮なネタを提供するために、寿司屋では迅速な提供が求められました。
そのため、簡潔で符牒である「むらさき」を使うことで、
「醤油」といちいち説明しなくても、素早く提供できるという背景がありました。
また、符牒には、直接的な表現を避け、上品な言葉遣いを好む、江戸っ子気質も影響していると言われています。

2-3. 醤油の色と「むらさき」の結びつき – 当時の色彩感覚と表現

前述の通り、昔の醤油は、現代の濃口醤油に比べて赤みがかった色をしていました。
当時の人々は、この赤褐色の中に、わずかな「紫」の色合いを感じ取り、「むらさき」と表現するようになったのでしょう。
これは、当時の人々が、現代人よりも色彩に対して繊細な感覚を持っていたことを示唆しています。
物の名前を直接言わず、色で例えることが粋なことだとされていました。

2-4. なぜ「むらさき」呼びが定着したのか?-他の説はあるか

「むらさき」呼びが定着した理由は、以下の様な説があります。

  • 醤油樽の中でゆっくりと熟成され、空気に触れることで徐々に赤みを帯び、光の加減によっては紫色に見えた。
  • 江戸っ子の美意識として、「粋」で「洒落」た表現を好んだため、「むらさき」という言葉を選んだ。
  • 当時の醤油は、現代よりもずっと高級品であり、高貴な色である紫と結び付けられることで、その価値をさらに高めようとした。

いずれにしても、「むらさき」という言葉には、単なる醤油の色だけでなく、当時の人々の美意識や、食文化、そして言葉遊びの要素が凝縮されていると言えるでしょう。

3. 寿司屋で使われる言葉、専門用語と隠語

寿司屋には、「むらさき」以外にも、独特の言葉や言い回しがたくさんあります。
これらの言葉は、符牒や隠語として、職人同士や常連客との間で使われてきました。
ここでは、代表的な寿司屋言葉を紹介し、その背景にある文化を探ります。

3-1. 「むらさき」だけじゃない!寿司屋の符牒一覧

寿司屋で使われる符牒は、魚介類の名前、調理法、道具、会計など、多岐にわたります。
以下に代表的なものをまとめました。

用語意味由来
あがりお茶寿司屋で最後に出されるお茶のこと。「上がり花」という言葉に由来し、「最後」を意味する。
なみだわさびわさびを効かせすぎると涙が出ること、また、わさびの葉の形が涙に似ていることから。
しゃり酢飯仏教用語の「舎利(しゃり)」に由来。釈迦の遺骨を指し、白米の見た目が似ていることから。
むらさきしょうゆ昔の醤油の色が赤褐色で、高貴な色である紫に見立てたという説
ぎょく卵焼き卵を「玉(ぎょく)」と呼ぶことから。「ぎょく」は宝石のことも指し、黄色く美しい卵焼きを宝石に見立てたという説がある。
がり甘酢生姜甘酢生姜を噛んだ時の「ガリガリ」という音から。
げそイカの足「下足(げそく)」が略されたもの。下足とは、履物を脱ぐ場所、または脱いだ履物のこと。
ひかりものコハダ、アジ、サバなど、皮の光る魚青魚の皮が光って見えることから
鉄火マグロの赤身を使った巻物赤身の色が、熱した鉄のように見えることから「鉄火巻」と呼ばれるようになった。賭博場(鉄火場)で手軽に食べられるものとして作られたという説もある。
かっぱキュウリを使った巻物カッパの好物がキュウリであるという言い伝えから。
おあいそ会計「お愛想」は、本来「おもてなし」や「心遣い」を意味する言葉ですが、転じて勘定を意味するようになった。「勘定を済ませて、お店への愛想(好意)が尽きた」という意味合いも含まれる。


3-2.あがり(お茶)、なみだ(わさび)など、代表的な符牒とその由来

  • あがり(お茶): 寿司屋で最後に出されるお茶を指します。「上がり花」という言葉に由来し、物事の終わりや最後を意味します。
  • なみだ(わさび): わさびを効かせすぎると涙が出ること、また、わさびの葉の形が涙に似ていることから、「なみだ」と呼ばれるようになりました。
  • しゃり(酢飯): 仏教用語の「舎利(しゃり)」に由来。釈迦の遺骨を指し、白米の見た目が似ていることから、そう呼ばれるようになりました。

3-3. 符牒が使われる理由 – 業界内のコミュニケーションと隠語文化

寿司屋で符牒が使われる理由は、主に以下の3つが挙げられます。

  • スムーズなコミュニケーション: 忙しい厨房内や、お客様とのやり取りの中で、符牒を使うことで、簡潔かつ迅速に意思疎通を図ることができます。
    特に、寿司屋のカウンターでは、職人とお客様との距離が近く、会話がスムーズに進むことが重要です。
    符牒は、そのための潤滑油のような役割を果たしています。
  • 隠語としての役割: お客様に直接的な表現を避け、上品な言葉遣いを心がけることで、お店の雰囲気を高める効果があります。
    また、符牒は一種の隠語であり、部外者には意味が分からないため、仲間内での秘密の会話にも使われます。
  • 伝統の継承: 寿司屋の符牒は、江戸時代から続く伝統文化の一部です。
    符牒を使うことで、職人としての誇りや、伝統を守る意識を高めることができます。

3-4. 寿司屋で「通」ぶれる?符牒の使い方と注意点

符牒は、寿司屋の文化を理解し、楽しむためのスパイスになります。
しかし、使い方を間違えると、かえって不自然になったり、お店の方や他のお客様に不快感を与えてしまうこともあります。

符牒を使う際は、以下の点に注意しましょう。

  • お店の雰囲気に合わせる: 高級店や格式の高いお店では、符牒の使用は控えめにするか、全く使わない方が良い場合もあります。
    カジュアルな雰囲気の回転寿司などでは、符牒を使っても問題ないことが多いでしょう。
  • 相手に伝わるか確認する: 初めて行くお店や、相手が符牒に慣れていない場合は、無理に使わない方が無難です。
    「おあいそ」程度であれば、広く一般的に使われるため、伝わる可能性は高いでしょう。
  • 使いすぎに注意する: あまりにも多くの符牒を使うと、かえって不自然になり、逆効果になることもあります。
    「通」ぶろうとして、無理に使う必要はありません。
  • 従業員に使うのはNG: 従業員に対して符牒を使うのは、基本的に失礼にあたります。
    「むらさきください」「あがりください」などとは言わず、「お醤油をください」「お茶をください」と丁寧な言葉遣いを心がけましょう。

符牒は、あくまでも寿司屋の文化を楽しむためのツールです。
無理に使わず、自然な会話の中で、少しずつ取り入れていくのが良いでしょう。

4. 現代における「むらさき」の使われ方

「むらさき」という言葉は、現代ではどのように使われているのでしょうか?
寿司屋での符牒としての役割だけでなく、日常生活や文学作品など、さまざまな場面で「むらさき」という言葉が使われることがあります。
ここでは、現代における「むらさき」の使われ方について、多角的に見ていきましょう。

4-1. 寿司屋以外での「むらさき」の使用例 – 日常生活や文学作品

「むらさき」は、寿司屋以外でも、醤油を指す言葉として使われることがあります。
例えば、家庭料理のレシピで「むらさきを少々加える」と書かれていたり、料理番組で使われたりすることがあります。

また、小説やエッセイでも「むらさき」が使われることがあります。
例としては、

  • 池波正太郎の時代小説
  • 志賀直哉の「暗夜行路」
    などがあります。

比喩表現として「むらさき」が使われることもあります。
例えば、夕焼け空の色を「むらさきに染まる」と表現したり、感情の高ぶりを「胸がむらさきに染まる」と表現したりすることがあります。

4-2. 若い世代への「むらさき」の認知度 – 言葉の世代間ギャップ

「むらさき」という言葉は、寿司屋で働く職人や、食通の間では今でも使われていますが、若い世代にはあまり馴染みがないかもしれません。

食文化に詳しい人の間では、ある程度認知されていると考えられますが、日常会話で使用する人は少ないでしょう。
これは、食文化の変化や、家庭での会話で使われる言葉の変化などが影響していると考えられます。

4-3. 「むらさき」を使うことのメリット・デメリット – シーン別の使い分け

「むらさき」という言葉を使うことには、メリットとデメリットがあります。

メリット

  • 粋な印象を与える: 寿司屋で「むらさき」を使うと、「通」な印象を与えることができます。
  • 会話のきっかけになる: 「むらさき」という言葉をきっかけに、会話が広がる可能性があります。
  • 日本の食文化を感じさせる: 「むらさき」という言葉を使うことで、日本の伝統や食文化に触れることができます。

デメリット

  • 相手に伝わらない可能性がある: 特に若い世代や、寿司屋に馴染みのない人には、意味が伝わらない可能性があります。
  • 場違いな印象を与える可能性がある: 高級店や格式の高いお店では、符牒の使用が好まれない場合もあります。
  • 知識をひけらかしているように聞こえる可能性がある: 親しい間柄でなければ、相手に不快な印象を与えかねません。

「むらさき」を使うかどうかは、場面や相手との関係性を考慮して判断する必要があります。

4-4. むらさき(醤油)の種類

現在では、様々な種類の醤油があり、それぞれに特徴があります。
主なものを以下にまとめます。

  • 濃口醤油: 日本で最も一般的な醤油で、幅広い料理に使われます。
  • 薄口醤油: 関西地方でよく使われる、色が薄く塩分濃度が高い醤油です。
  • たまり醤油: 主に中部地方で作られる、濃厚でとろみのある醤油です。寿司や刺身につけたり、照り焼きのタレなどに使われます。
  • 再仕込み醤油: 一度出来上がった醤油を、再度原料を加えて熟成させた、濃厚な醤油です。
  • 白醤油: 愛知県碧南市で生まれた、色が薄く、甘みが強い醤油です。

このように醤油にはたくさんの種類があり、それぞれに特徴があります。
お寿司屋さんでは、濃口醤油が置かれてることが多いですが、お店によっては数種類の醤油を使い分けているところもあります。
食べ比べをしてみるのも面白いかもしれませんね。

5. 「むらさき」から広がる、言葉と食文化

寿司屋で醤油を指す「むらさき」という言葉は、単なる隠語にとどまらず、日本の食文化や言葉の奥深さを感じさせてくれる存在です。
ここでは、「むらさき」という言葉を通して、日本の食文化についてさらに深く掘り下げていきます。

5-1. 言葉が映し出す、日本の食文化の奥深さ

日本には、食材、調理法、食事作法など、食に関するさまざまな言葉が存在します。
「むらさき」もその一つであり、言葉の背景には、その言葉が生まれた時代や文化が反映されています。

例えば、「いただきます」や「ごちそうさま」という食事の挨拶は、食材や料理を作ってくれた人への感謝の気持ちを表しています。
また、「懐石料理」や「精進料理」といった言葉は、単なる料理の種類を表すだけでなく、それぞれの料理に込められた精神性や歴史をも示しています。

5-2. 食にまつわる言葉の面白さ – 他の隠語・符牒との比較

「むらさき」のように、特定の業界や集団でのみ使われる隠語や符牒は、他にもたくさんあります。

他の業界の例

  • 歌舞伎: 「お豆腐」(白粉)、「お歯黒」(眉墨)など、化粧品を食材に例える言葉があります。
  • 相撲: 「ごっつぁんです」(「ごちそうさまです」の意味)、「かわいがり」(稽古で先輩力士が後輩力士を鍛えること)など、独特の言葉が使われます。
  • 漁師言葉:「かし」(波)、「やま」(海)
  • 料理人言葉: 「やま」(品切れ)、「あねさん」(先に仕込んだ食材)

これらの言葉は、それぞれの業界の文化や歴史を反映しており、言葉の面白さを感じさせてくれます。
符牒には、その言葉が生まれた背景、合理性、そして、その世界観があります。
例えば歌舞伎で化粧品を食材に例えるのは、口に入っても問題ないもので化粧をしていた、という背景があります。
その背景を知ることで、より食への関心を深めることができるでしょう。

5-3.寿司と醤油、そして言葉の未来 – 伝統の継承と変化

寿司と醤油は、日本の食文化を代表する存在であり、その関係は切っても切れません。
「むらさき」という言葉も、寿司と醤油の関係性の中で生まれ、育まれてきました。

近年、食のグローバル化や、ライフスタイルの変化に伴い、日本の食文化も変化しつつあります。
食に関する言葉も、新しい言葉が生まれたり、古い言葉が使われなくなったりと、常に変化を続けています。
しかし、「むらさき」のように、言葉の背景にある文化や歴史を理解し、次世代に伝えていくことは、日本の食文化を豊かにし、未来へと繋いでいくために非常に大切です。

6. 寿司と醤油に関する関連情報

ここでは、寿司と醤油に関する、より深く、より役立つ情報をお届けします。
醤油の種類や選び方、美味しい醤油の見分け方、そして、家庭でも楽しめる醤油を使ったレシピなど、あなたの食卓を豊かにする情報が満載です。

6-1. 醤油の種類と特徴、選び方

醤油は、日本の食卓に欠かせない調味料ですが、その種類は多岐にわたります。
ここでは、代表的な醤油の種類と特徴、選び方のポイントを紹介します。

種類特徴おすすめの使い方
濃口醤油日本で最も一般的な醤油。大豆と小麦をほぼ同量使い、塩水を加えて発酵・熟成させたもの。香り、味、色のバランスが良い。煮物、焼き物、炒め物、つけ・かけ醤油など、幅広い料理に使えます。
薄口醤油関西地方でよく使われる醤油。濃口醤油よりも色が薄く、塩分濃度が高い。素材の色や風味を生かしたい料理に。煮物、吸い物、うどんつゆなど。
たまり醤油主に中部地方で作られる醤油。大豆を主原料とし、小麦をほとんど使わないか、少量しか使わない。濃厚でとろみがあり、独特の風味がある。寿司、刺身、照り焼き、佃煮など。
再仕込み醤油一度出来上がった醤油(生醤油)を、再度、麹と塩水を加えて発酵・熟成させたもの。「甘露醤油」とも呼ばれる。色、味、香りともに濃厚で、複雑なうま味がある。刺身、寿司、冷奴、ステーキなど、素材の味を引き立てたい料理に。
白醤油愛知県碧南市で生まれた醤油。小麦を主原料とし、大豆を少量しか使わないか、全く使わない。色が非常に薄く、琥珀色をしている。甘みが強く、素材の色や風味を生かしたい料理に。吸い物、茶碗蒸し、だし巻き卵、漬物など。白醤油は、素材の色を活かしたい料理に最適です。

選び方のポイント

  • 用途に合わせて選ぶ: 煮物には濃口醤油、お吸い物には薄口醤油など、料理の種類や目的に合わせて醤油を選びましょう。
  • 原材料をチェック: 原材料表示を見て、大豆、小麦、食塩以外の添加物(アルコール、甘味料、調味料など)が含まれているか確認しましょう。添加物が少ない方が、より自然な風味を楽しめます。
  • 色や香りを確かめる: 可能であれば、実際に醤油の色や香りを確かめてみましょう。良い醤油は、透明感のある赤褐色で、芳醇な香りがします。

6-2. 美味しい醤油の見分け方、テイスティング

美味しい醤油を見分けるには、以下のポイントに注目しましょう。

  • 色: 透明感のある赤褐色で、明るく澄んでいるものが良い醤油です。
  • 香り: 芳醇な香りがするものが良い醤油です。不快な臭いがする場合は、品質が劣化している可能性があります。
  • 味: 塩辛さだけでなく、うま味、甘み、酸味、苦味のバランスが取れているものが良い醤油です。
  • 粘度: 濃口醤油はある程度とろみがありますが、サラサラしすぎているものは、熟成が不十分な可能性があります。

醤油のテイスティングをする際は、以下の手順で行います。

  1. 少量の醤油を白い器(または手の甲)に出します。
  2. 色を観察します。
  3. 香りをかぎます。
  4. 少量口に含み、舌全体で味わいます。
  5. 飲み込んだ後の余韻を楽しみます。
  6. 醤油を使ったレシピ

醤油は、和食だけでなく、洋食、中華など、さまざまな料理に使える万能調味料です。
ここでは、醤油を使った簡単レシピをいくつか紹介します。

  • 醤油麹: 醤油と米麹を混ぜて発酵させた、万能調味料です。肉や魚を漬け込んだり、炒め物や和え物に加えたりと、さまざまな料理に使えます。
  • 卵かけご飯: ご飯に生卵と醤油をかけるだけの、シンプルながらも奥深い味わいの定番料理です。醤油の種類を変えるだけで、さまざまな風味を楽しめます。
  • 肉じゃが: 醤油、砂糖、みりんを使った、日本の家庭料理の定番です。
  • ブリの照り焼き: 醤油、みりん、酒、砂糖を混ぜ合わせたタレを、ブリに塗って焼いた、香ばしい一品です。
  • 醤油ドレッシング: 醤油、酢、油、砂糖などを混ぜ合わせた、自家製ドレッシングです。サラダや和え物にどうぞ。

7. まとめ:寿司屋の「むらさき」から見えてくる日本の食文化

この記事では、寿司屋で醤油を指す言葉「むらさき」の由来や歴史、そして現代における使われ方について解説してきました。

「むらさき」という言葉は、もともとムラサキ(紫草)という植物の根からとれる染料で染められた高貴な紫色を指す言葉でした。
江戸時代、醤油は貴重で高価なものであり、その色が赤褐色がかっていたことから、高貴な色である「紫」に例えられ、「むらさき」と呼ばれるようになったという説が有力です。

寿司屋では、お客様に直接的な表現を避けるため、符牒と呼ばれる隠語が使われます。
「むらさき」もその一つであり、業界内のスムーズなコミュニケーションや、上品な言葉遣いを好む江戸っ子気質、そして醤油への敬意が込められています。

現代では、寿司屋以外でも「むらさき」という言葉が使われることがありますが、特に若い世代には馴染みが薄いかもしれません。
しかし、「むらさき」という言葉を通して、日本の食文化や言葉の奥深さに触れることができます。

醤油にはさまざまな種類があり、それぞれに特徴があります。
用途や好みに合わせて使い分けることで、料理の味がより一層引き立ちます。
ぜひ、あなたのお気に入りの醤油、そして「むらさき」を見つけて、日々の食卓を豊かに彩ってみてください。

この記事をきっかけに、「むらさき」だけでなく、様々な食にまつわる言葉や日本の食文化に興味を持っていただけたら嬉しいです。