寿司屋が徹底解説!戻り鰹の旬はいつ?初鰹との違いと美味しい食べ方

秋が深まり、スーパーの鮮魚コーナーに「戻り鰹」が並ぶ季節になりました。
「春に食べた初鰹とどう違うの?」「脂がのっていると聞くけど、どんな風に食べるのが一番美味しいんだろう?」そんな疑問を感じたことはありませんか?

同じ「鰹」という魚でも、獲れる時期によってその味わいは全く異なります。
特に秋の戻り鰹は、たっぷりと脂を蓄えた濃厚な旨味が魅力で、「トロ鰹」とも呼ばれるほどの逸品です。

この記事では、寿司のプロである私たち「回転寿司かねき」が、長年の経験で培った知識をもとに、戻り鰹の基本から応用まで、どこよりも分かりやすく徹底解説します。
美味しい戻り鰹の選び方から、その魅力を最大限に引き出す刺身やたたきの楽しみ方、さらにはご家庭で手軽に作れる絶品アレンジレシピまで、これを読めば戻り鰹のすべてが分かります。

この記事を読めば、以下のポイントが分かります。

  • 戻り鰹と初鰹の決定的な違いと、本当に美味しい旬の時期
  • スーパーで失敗しない、プロが実践する美味しい戻り鰹の見分け方
  • 戻り鰹の魅力を最大限に引き出す食べ方と、家庭でできる簡単絶品レシピ

今年の秋は、プロの知識で選んだ最高の戻り鰹で、ご家庭の食卓をさらに豊かにしてみませんか?

秋の味覚「戻り鰹」とは?旬の時期と初鰹との違いを徹底解説

秋が深まると鮮魚店の店頭や寿司屋の品書きで見かけるようになる「戻り鰹」。
脂がのっていて美味しいと評判ですが、春先に見かける「初鰹」とは一体何が違うのでしょうか。

同じ鰹という魚でありながら、時期によって全く異なる魅力を持つ、その秘密を私たち寿司のプロが詳しく解説します。
戻り鰹の旬の時期や、その濃厚な味わいが生まれる理由を知れば、秋の食卓がもっと豊かになるはずです。

戻り鰹の旬はいつ?一番美味しい時期

戻り鰹の旬は、一般的に9月頃から11月頃にかけてです。
特に、海水温が下がり始める9月中旬から10月下旬にかけて三陸沖や房総半島沖で水揚げされる戻り鰹は、たっぷりと脂を蓄えており、「トロ鰹」や「脂かつお」とも呼ばれるほどです。

この時期の戻り鰹は、まさに最高に美味しい旬の味覚と言えるでしょう。

「初鰹」との決定的な違いとは?回遊ルートから解説

初鰹と戻り鰹の最大の違いは、日本の近海を回遊するルートと、その目的から生まれます。
鰹は暖かい海を好む回遊魚で、季節によって太平洋を大規模に移動しています。

  • 初鰹(のぼり鰹): 春になると、餌のイワシなどを求めて黒潮に乗り、九州南部から太平洋沿岸を北上してきます。この北上している最中に漁獲されるのが「初鰹」です。まだ成長途中の若い鰹が中心となります。
  • 戻り鰹(くだり鰹): 夏の間に北の海で豊富な餌を食べて丸々と太った鰹は、秋になると産卵のために暖かい南の海を目指して南下を始めます。この南下中に漁獲されるのが「戻り鰹」です。

つまり、エネルギッシュに北へ向かう若い鰹が「初鰹」栄養をたっぷり蓄えて故郷へ帰る成熟した鰹が「戻り鰹」というわけです。

見た目と味の違いを比較!こってり脂の「戻り鰹」とさっぱり「初鰹」

回遊ルートと目的が違うことで、戻り鰹と初鰹には見た目や味、脂の量に大きな違いが生まれます。
それぞれの特徴を下の表で比較してみましょう。

項目戻り鰹(秋)初鰹(春)
味わい濃厚でこってり、もっちりとした食感赤身の風味が強く、さっぱりとした味わい
脂の量非常に多い(脂肪分10%以上になることも)少ない(脂肪分1~2%程度)
見た目身が白っぽく見えるほど脂がのっている透明感のある鮮やかな赤身
おすすめの食べ方刺身、たたき(特に塩たたき)、照り焼きたたき、カルパッチョ、漬け

このように、戻り鰹の魅力は何と言ってもその濃厚な脂の旨味にあります。
口に入れた瞬間に広がる豊かな風味と、とろけるような食感は、この時期にしか味わえない格別の美味しさです。

さっぱりとした初鰹も魅力的ですが、こってりとした味わいが好みの方には、戻り鰹を心からおすすめします。

寿司のプロが教える!スーパーで美味しい戻り鰹を見分けるコツ

せっかく旬の戻り鰹をご家庭で味わうなら、一番美味しいものを選びたいですよね。
スーパーでパック詰めされた柵(さく)の状態でも、いくつかのポイントを押さえるだけで、プロのような目利きが可能です。

私たちが市場で魚を選ぶ際に必ずチェックする、美味しい戻り鰹を見分けるためのコツを特別にお教えします。

柵(さく)で選ぶ場合のチェックポイント

パックを手に取ったら、まず以下の3点を確認してみてください。
これだけで、戻り鰹の鮮度と脂のりが格段に良いものを選べるようになります。

  • ①皮目の下に厚い「脂の層」があるか
    戻り鰹の最大の魅力は、なんといっても濃厚な脂です。皮と赤身の間に、くっきりと白い脂肪の層が厚く入っているものを選びましょう。この層が厚いほど、脂がたっぷりのっている証拠です。
  • ②血合いの色が「鮮やかなえんじ色」か
    柵の中央にある赤黒い部分が「血合い」です。この血合いは鮮度のバロメーター。時間が経つにつれて黒ずんでくるため、鮮やかなえんじ色(ルビー色)をしているものが新鮮な証拠です。黒っぽいものは避けましょう。
  • ③身の角が立ち、ドリップが出ていないか
    切り身の角がだれずにピンと立っているものは、身が引き締まっている証拠です。
    また、パックの底にドリップと呼ばれる赤い水分が出ていないかも確認してください。ドリップは魚の旨味成分が流れ出たものなので、出ていないものを選ぶのがおすすめです。

鮮度の良い戻り鰹の色と身質とは

最後に、身全体の色と質感に注目しましょう。
新鮮で美味しい戻り鰹には、特有の色とツヤがあります。

色は、透明感のある深い赤色をしているのが理想です。
鮮度が落ちると、この透明感がなくなり、全体的に白っぽく濁ったような色合いになります。

ただし、一点注意したいのが「脂の白さ」です。
最高級の戻り鰹、いわゆる「トロ鰹」は、身全体に脂のサシが細かく入ることで、うっすらとピンク色や白っぽく見えることがあります。
これは鮮度が落ちているのではなく、むしろ極上の脂がのっている「当たり」の証拠。
身にツヤがあり、血合いの色が綺麗であれば、ぜひ選んでみてください。
刺身で食べれば、とろけるような最高の味を楽しめますよ。

戻り鰹の魅力を最大限に!基本の食べ方「刺身」と「たたき」

鮮度の良い戻り鰹が手に入ったら、いよいよ実食です。
戻り鰹の持つ濃厚な脂の旨味と、もっちりとした食感を最大限に楽しむには、やはりシンプルな食べ方が一番です。

ここでは、鰹料理の二大巨頭である「刺身」と「たたき」、それぞれの魅力と、私たちプロがおすすめする薬味の組み合わせをご紹介します。

まずはシンプルに!薬味で味わう戻り鰹の刺身

濃厚な脂の甘みをダイレクトに味わうなら、何と言っても「刺身」がおすすめです。
さっぱりとした初鰹は皮目を炙る「たたき」で香ばしさを加えるのが人気ですが、脂がたっぷりとのった戻り鰹は、ぜひ一度、刺身でそのとろけるような食感を体験してみてください。

合わせる薬味次第で、味わいは無限に広がります。

  • おろし生姜・おろしにんにく: 鰹の風味を引き立てる定番の組み合わせ。濃厚な脂をキリっと引き締めてくれます。
  • 玉ねぎスライス: 水にさらして辛味を抜いた玉ねぎは、シャキシャキとした食感が良いアクセントになります。
  • みょうが・大葉: 爽やかな香りが口の中に広がり、戻り鰹の濃厚な味わいをさっぱりとさせてくれます。

醤油でいただくのはもちろんですが、私たち寿司職人のおすすめは「塩」と「ごま油」です。
岩塩のようなミネラル豊富な塩を少しつけてから、香り高いごま油をほんの数滴たらして食べると、戻り鰹の甘い脂が口いっぱいに広がり、格別の味わいになります。

香ばしさがたまらない!戻り鰹のたたきを塩とポン酢で楽しむ

もちろん、戻り鰹を「たたき」で味わうのも絶品です。
強火で皮目を一気に焼き上げることで、余分な脂が落ち、香ばしい薫香が食欲をそそります。

身の中心はレアなままなので、刺身の食感と焼き目の香ばしさを同時に楽しめるのがたたきの魅力です。

たたきの味わい方は、大きく分けて2種類あります。

  • 塩たたき: 産地である高知で定番の食べ方です。焼き立ての温かい鰹にパラパラと塩を振り、薬味と一緒に手で軽く叩いて味をなじませます。シンプルな塩味が、戻り鰹本来の旨味と脂の甘みを最大限に引き出します。
  • ポン酢(タレ)たたき: 薬味をたっぷりとのせ、ポン酢をかけていただく、全国的におなじみの食べ方です。ポン酢の酸味が濃厚な脂と絶妙にマッチし、さっぱりといただけます。

どちらの食べ方も甲乙つけがたい美味しさです。
ぜひ両方試して、お好みの味を見つけてみてください。

家庭でできる!戻り鰹を味わい尽くす、おすすめ絶品レシピ

刺身やたたきといった定番の食べ方以外にも、戻り鰹の楽しみ方はたくさんあります。
濃厚な旨味と脂の甘みは、少し手を加えるだけで、食卓の主役になる絶品料理に大変身します。

ここでは、ご家庭で手軽に挑戦できる、私たちプロもおすすめのアレンジレシピを3つご紹介します。

ご飯がすすむ!特製ダレで作る戻り鰹の漬け丼

少しだけ筋がある部分や、刺身の切り落としが手に入った時にぜひ試していただきたいのが「漬け丼」です。
特製のタレに漬け込むことで、戻り鰹の旨味が凝縮され、ご飯との相性も抜群です。

【材料(2人分)】

  • 戻り鰹(柵):200g
  • 醤油:大さじ3
  • みりん:大さじ2
  • 酒:大さじ1
  • おろし生姜:小さじ1
  • 温かいご飯:丼2杯分
  • お好みの薬味(大葉、刻み海苔、白ごまなど)

【作り方】

  1. みりんと酒を小鍋に入れて火にかけ、アルコールを飛ばしたら(煮切り)、醤油と混ぜ合わせて冷ましておきます。
  2. 戻り鰹を1cm程度の厚さに切り、1のタレとおろし生姜と一緒にボウルに入れ、冷蔵庫で20〜30分ほど漬け込みます。
  3. 丼にご飯を盛り、漬け込んだ鰹を並べ、お好みで薬味を散らせば完成です。

おしゃれな一品に!戻り鰹のカルパッチョ

濃厚な戻り鰹は、オリーブオイルや柑橘類との相性も抜群です。
切って盛り付けるだけで、食卓が華やぐおしゃれなカルパッチョが完成します。

【材料(2人分)】

  • 戻り鰹(柵):150g
  • 玉ねぎ:1/4個
  • ミニトマト:4個
  • オリーブオイル:大さじ2
  • レモン汁:大さじ1
  • 塩、粗びき黒こしょう:少々
  • ベビーリーフやハーブなど:お好みで

【作り方】

  1. 玉ねぎは薄切りにして水にさらし、辛味を抜いてから水気をしっかり切ります。
  2. 戻り鰹は薄切りにして皿に並べ、玉ねぎ、半分に切ったミニトマト、ベビーリーフなどを彩りよく盛り付けます。
  3. 食べる直前に、オリーブオイル、レモン汁、塩、黒こしょうを混ぜ合わせたドレッシングをかければ完成です。

お子様も喜ぶ!戻り鰹の竜田揚げ

お刺身が苦手な方やお子様には、外はカリっと、中はふっくらジューシーな「竜田揚げ」がおすすめです。
下味をしっかりつけることで、鰹特有の風味が苦手な方でも美味しく召し上がれます。

【材料(2人分)】

  • 戻り鰹(柵):200g
  • 醤油:大さじ2
  • 酒:大さじ1
  • おろし生姜、おろしにんにく:各小さじ1/2
  • 片栗粉:大さじ3
  • 揚げ油:適量

【作り方】

  1. 戻り鰹を一口大に切り、醤油、酒、おろし生姜、おろしにんにくと一緒にポリ袋に入れ、15分ほど漬け込みます。
  2. 汁気を軽く切り、片栗粉を全体にまんべんなくまぶします。
  3. 170℃に熱した油で、きつね色になるまで2〜3分揚げれば完成です。

知って得する!戻り鰹の栄養と正しい保存方法

旬の戻り鰹は、その美味しさだけでなく、私たちの体にとって嬉しい栄養素が豊富に含まれている優れた食材です。
美味しくいただいた後は、残りを上手に保存して最後までその価値を味わい尽くしたいもの。

ここでは、戻り鰹が持つ栄養の秘密と、鮮度を保つための正しい保存方法について、プロの視点から詳しく解説します。

戻り鰹に含まれる豊富な栄養素とは?

脂がたっぷりのった戻り鰹は、特に健康維持に役立つ栄養素が満載です。
代表的なものをいくつかご紹介します。

  • DHA(ドコサヘキサエン酸)・EPA(エイコサペンタエン酸)
    青魚に多く含まれる不飽和脂肪酸の一種です。血液をサラサラにする効果や、脳の働きを活性化させる効果が期待されています。脂が豊富な戻り鰹は、初鰹に比べてこれらの含有量が多いのが特徴です。
  • 鉄分
    特に血合いの部分に豊富に含まれており、貧血の予防・改善に役立ちます。女性や成長期のお子様には積極的に摂っていただきたい栄養素です。
  • 良質なタンパク質
    筋肉や血液など、体を作るために欠かせないタンパク質が豊富です。消化吸収も良く、効率的に体に取り込むことができます。
  • ビタミンB群
    エネルギー代謝を助け、疲労回復をサポートする働きがあります。季節の変わり目で疲れが出やすい時期にぴったりの食材です。

美味しさを長持ちさせる冷蔵・冷凍保存のコツ

スーパーで買ってきた鰹の柵は、できるだけその日のうちに食べるのが一番ですが、もし食べきれない場合は正しく保存することで美味しさを長持ちさせることができます。

冷蔵保存の場合(翌日までに食べるなら)

  1. パックから取り出し、キッチンペーパーで表面の水分(ドリップ)を優しく拭き取ります。
  2. 新しい乾いたキッチンペーパーで柵を包み、その上から空気が入らないようにぴったりとラップをします。
  3. 冷蔵庫の中でも温度が低いチルド室やパーシャル室に入れて保存します。

冷凍保存の場合(長期保存するなら)

戻り鰹は脂がのっているため、冷凍しても味が落ちにくいのが利点です。

  1. 冷蔵保存と同様に、ドリップをしっかりと拭き取ります。
  2. 柵のまま、空気に触れないようにラップで二重にぴったりと包みます。
  3. 冷凍用の保存袋に入れて空気を抜き、金属製のトレーなどに乗せて急速冷凍します。
  4. 解凍する際は、電子レンジは使わず、氷水に袋ごと浸けて解凍するか、冷蔵庫でゆっくり自然解凍するのがおすすめです。

このひと手間をかけるだけで、旬の戻り鰹を長く美味しく楽しむことができます。

まとめ

今回は、秋の味覚の代表格である「戻り鰹」について、旬の時期や初鰹との違い、美味しい見分け方からプロがおすすめする食べ方まで、詳しく解説しました。

さっぱりとした初鰹とはまた違う、濃厚な脂の旨味ともっちりとした食感が戻り鰹の最大の魅力です。
この記事を参考に、ぜひご家庭でも旬の戻り鰹を味わい尽くしてみてください。

薬味を変えたり、少しアレンジを加えたりするだけで、その楽しみ方は無限に広がります。私たち「回転寿司かねき」でも、旬の時期には最高の戻り鰹を仕入れて、皆様にご提供しています。
プロが厳選した格別の味を、ぜひお店でもご賞味ください。